未来なき戦略ビジョン 都知事選・小池戦略の序章
2020年1月22日


東京都昨年末 2040年代を展望する 「『未来の東京』戦略プラン」を発表

 東京都は昨年末、2040年代を展望する「『未来の東京』戦略プラン」を発表しました。
 小池知事はビションの策定にあたって、東京が「グローバル経済化が進む世界経済」「第4次産業革命」「気候変動がもたらす持続可能性の危機」「少子高齢・人口減少社会の進行」という4つの点での歴史的な転換点に直面していることをあげ、「こうした厳しい状況に正面から向き合い、あるべき姿を思い描いた上で、なすべき策を大胆に展開していくことがなにより重要」「今こそ『人が輝く』東京を作り上げたい。こうした思いを持って、この『未来の東京』戦略ビションを策定」したと述べています。
 また、戦略ビジョンは、長期戦略を貫く「基本戦略」として「バックキャストの視点で将来を展望する」「民間企業等、多様な主体と協働して政策を推し進める」「デジタルトランスフォーメーションで『スマート東京(注1)』を実現」「時代や状況の変化に弾力的に対応『アジャイル(注2)』」をあげ、具体的方途としては、20の柱のビジョンによる「2040年代の東京ビジョン」と今後10年の課題として20の戦略からなる「2030年に向けた戦略」を提案しています。
(注1)ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させるという概念。
(注2)時代や状況の変化に柔軟かつ迅速に対応すること。(戦略ビジョンの注から)

誰のためのビジョンか

 この戦略ビジョンの基本的性格は、児童の絵の表紙などソフトな装いとは裏腹に、今夏に実施される東京都知事選挙にむけた小池知事の選挙戦略のいっかんとして策定されたものと言え、その内容は、①日本経団連や経済同友会などの財界戦略とアベノミクスの具体化②大企業や富裕層が潤えばそのしずくがしたたり落ちてくるという“トリクルダウン”の政策③自治体の使命である「住民の福祉の増進」の放棄④住民参加・住民自治の否定を基本的特徴としています。

都民の苦しみは目を向けず

 戦略ビションは私たち都民が置かれている現状―若者を中心とした貧困の増大と格差の拡大、非正規雇用の常態化、2万2000人もの認可保育所待機児、「介護難民」、消費税増税・国民健康保険・介護保険などの負担増、子どもの貧困、高い居住費、ヒートアイランド現象による異常気象や熱中症増大、ものづくりと商店街、中小零細業者の衰退などの深刻な実態に目を向けることはなく、その視点は、「世界をリードする活力を取り戻す」(「経済構造改革に関する提言」日本経団連)ことにそそがれ、「世界中のヒト・モノ・カネ・情報が集まる(「略)東京」「世界一の高い生産性を実現した、世界経済を牽引する東京」などが麗々しく掲げられているのです。
 その一方で「『住まい』と『地域』を大切にする戦略」と言いながら、都営住宅の新規建設、増設の言葉は見当たりません。教育では、「海外や実社会に積極的にチャレンジする子供の応援」が掲げられる一方、ゆきとどいた教育の鍵を握る30人学級の提案もありません。保育所の待機児解消の位置づけもなく、高齢者介護も先行きは示されていません。
 結局、都民の苦しみには目を向けず、ばら色の未来像を描いたに過ぎないのではないでしょうか。

東京大改造でSDGsに逆行

 戦略ビジョンは、「国際金融拠点」や「リニア・羽田などの広域アクセスの利便性を活かした国際交流拠点」、「経済中枢機能の集積や質の高い業務機能を活かしたビジネス・国際交流拠点」など、石原都政以降の歴代自民党型都政がすすめてきた超高層ビルと幹線道路を軸とした東京大改造計画と東京一極集中政策をいっそう拡大し推進するものとなっています。
 このような東京大改造路線は国連が定めた持続可能な世界の実現をめざす「SDGs」がかかげた「貧困をなくそう」「すべての人の健康と福祉」「人や国の不平等をなくそう」といった理念・とりくみとは似ても似つかないもので、東京における貧困と格差の拡大、社会福祉の破壊に拍車をかけ、「SDGs」のとりくみに逆行するものといわざるを得ません。

未来も軍事基地が支配

 何よりも重大な問題は、東京の平和の文言がまったく見当たらないことです。
 私たちが暮らす東京には、横田基地をはじめ広大な米軍基地が置かれ、CV22オスプレイが配備され戦争の拠点となっています。横田空域によって東京の空も米軍に奪われています。
 東京の平和、基地のない東京の実現は、東京の未来にとって最重要の課題です。小池知事は、東京に米軍の基地が未来を通じて存在し、都民を戦争の危険にさらしつづけることが許されるとでもいうのでしょうか。この一点をとっても、この戦略ビションが都民と東京の「未来」を語る資格がないことは明らかです。

都民参加の否定

 かつて革新都政(1967年~1979年)は、憲法をくらしに生かす立場から、「青空と広場の東京構想」や「東京都中期計画」などの構想や計画を策定。富の再配分を実現するために、ひとりの都民が人間らしい生活をするにはこれだけの制度や施策、都市施設が必要だとする「シビルミニマム」を設定しその実現に全力をあげました。そしてのその実現にあたっては、「都民が都政の主人公」であることを宣言し、あらゆる場面で都民参加をつらぬきました。ところが、小池知事の戦略ビジョンでは、「民間等との協働」「区市町村との連携」は謳われているものの、もっとも大事な「都民参加」「都民との協働」は掲げられていません。
 小池知事お得意のトップダウンによる都民不在の戦略ビジョン推進を認めるわけにはいきません。


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