~連載(第14回)~ 検証 革新都政その後 鈴木都政16年⑫ 減量経営②
2019年7月17日
ゆりかごから墓場まで4兆円もの公共料金値上げ
鈴木都政は誕生とともに財政再建を錦の御旗にして減量経営の方針を都政にもちこみ公共料金の値上げをおしすすめました。そのなかには保育料、都営住宅家賃、国民健康保険料(特別区)、スポーツ・文化施設利用料、上下水道・交通料金、さらにはあかちゃんの分娩料から霊園使用料にいたるまで、まさにゆりかごから墓場までのありとあらゆる住民サービスが対象とされました。
また、その値上げ幅は革新都政の時と比べ2~5倍にも達するものもあり、例えば分娩料2・2倍、霊園使用料4・6倍、都営住宅家賃2倍、水道料金1・9倍、下水道料金3・9倍、都立大学授業料2・9倍、国民健康保険料(特別区・1人当たり平均額)3・3倍など異常なものでした。
そして都民の負担は累計388種、金額で3兆9208億円に及び、都民1人当たりの負担額は33万5000円、4人家族で134万円にも及ぶものとなりました。そこに「住民の福祉の増進」を使命とする自治体の姿を見ることはできません。
公共料金の3つの原則
そして鈴木都政はこうした公共料金引き上げをすすめるにあたって、①受益者負担原則、②原価主義、③3年ごと見直しという「公共料金の3つ原則」をもちだし、都民負担を強制したのです。
①受益者負担原則
これは都民サービスにかかった経費は「利益をうけた者が負担する」という考えにもとづくものです。この考えによれば、お金が払える人はサービスを利用することができても、払えない人はサービスから排除されても仕方がないということになります。この考え方は物・サービスを売ってもうけるという市場原理にもとづくものですが、「住民の福祉の増進」「健康で文化的な最低限の生活の保障」を使命とする自治体のサービスとは相容れないものです。
このため革新都政では、だれでも利用できるように都立公園を無料で開放したり、各種の使用料・手数料も都民の負担となり、サービス利用のさまたげにならないように低く抑えていたのです。ところが鈴木都政はこれをくつがえして都立公園を有料化したり、「福祉サービスのすべてが、無料もしくは著しく低廉な費用で供給されるべきであるとする通念は再検討されるべきだ」(都財政再建委員会答申)だとしてシルバーパスの有料化や、特別区国民保険料の引き上げ(所得割方式から医療費対応方式に変更)などを強行したのです。
②原価主義
革新都政のもとでは、公共料金の設定は、「都民の負担能力」や「政策目的」をふまえ、総合的な判断にもとづいて決められていました。これに対して鈴木都政はこれを否定して、「料金は原価(かかった経費)で計算する」という考えを打ちだし、つぎつぎと料金を引き上げていったのです。
③3年ごとの料金見直し
革新都政のもとでは公共料金の見直しは、施設の更新、物価の高騰など、どうしても料金見直しをおこなわなければならい場合に限って実施されましたが、鈴木都政のもとでは、これでは減量経営が達成できないとして、3年ごとの見直し方針を打ちだしたのです。
住宅供給公社賃貸住宅家賃では家賃を市場家賃に近づけるという方針にもとづいて、3年ごとに家賃改定が実施され、おおくの居住者が高額家賃に苦しめられることになったのです。
都営住宅撤退の手段にも
さらに許されないことは、鈴木都政が「公営住宅家賃を民間並みに引き上げれば、公営と民間の家賃格差がなくなる」「今後は公営住宅の必要がなくなり、住宅建設は民間にゆだねる」(新しい都市経営の方向)といって、家賃値上げを都営住宅からの撤退するための手段とまでしようとしたことです。
消費税でも1989年の導入にあたって、国の方針通りに都の公共料金に消費税を転嫁。5年後の地方消費税導入にあたっても、地方消費税の創設を主張するなど、消費税推進の旗振り役を果たしたのです。
卯月はじめ