「検証」2019年度東京都予算(Ⅱ)
2019年6月15日


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 都民生活に直結する2019年度予算は、都民の強い要望と小池知事の関心が強いバイアスがかかった施策は伸びていますが、住民の福祉の増進という自治体本来の役割からほど遠い予算となっています。主な分野の予算の特徴を見てみます。(1回目・5月号)

Ⅱ 子育て、高齢者・介護、障がい者、医療

□待機児ゼロは19年度で達成するか?保育士不足は一層深刻に

 待機児解消のため、19年度では2万1千人分の目標と予算を掲げました。
 小池都政の待機児ゼロ施策は安倍内閣と同様に多様なサービスの提供であるため、企業主導型保育はトラブルが相次ぎ、ベビーシッター利用支援事業では、保育の質(子守)の懸念があり利用者が極端に少なく、予算の縮小に追い込まれています。
 19年度予算では、国が打ち出した幼児教育無償化制度の対象外になる層に対して都独自の支援策を打ち出しました。
 しかし、安倍内閣の幼児教育無償化制度は、消費税10%が財源で、住民税非課税世帯には1%の財源しか使われないことなど、本来は待機児解消を優先させることが求められているものです。待機児童解消のカギは保育士不足を解消ですが、労働者平均より7万円も低く、都の予算でも抜本的な改善がされていません。民間大手の保育事業所でも、保育士不足は深刻で、保育所新設は19年度は3割減となるとみており、19年度内待機児ゼロの達成はむずかいしい状況です。《都政新報5月10日付》
□特養ホーム建設費が激減、介護職員の処遇改善に手が打たれず
 東京都の高齢者人口は307万8千人で人口の22・5%、内75歳以上が157万8千人で初めて65~74歳までの人口を上回りました。このような中で入居基準が要介護3~5へ制限されたにもかかわらず特養ホーム待機者は3万1千人となっています。
 19年度予算では、特養ホームは昨年に比べ83・9億円激減となっています。建設の見込みが立たないのです。原因は高い土地代と介護人材の深刻な不足です。19年度予算で、区市町村への予算は計上されていますが、豊富な予算を民有地買い上げを行い介護事業者へ貸付や、都営住宅の建替時、用地の民間売却でなく、特養ホームや保育所の建設用地に優先して活用する施策を行うべきです。
 介護職員の不足も深刻です。平均賃金より10万円も低い介護職員の賃金の改善を、都は国の制度を前提とした都独自の「介護職員キャリアパス導入促進事業」加算で改善を図ろうとしていますが、16年度26億円↓17年度16億円↓18年度11億円↓19年度10億円と連続低下しています。原因は制度が現場に全く合わず、執行率が極端に低いことです。
□障害者施設の待機者は三桁、「障害者差別解消条例」の具体化が求められる
 昨年10月「東京都障害者差別解消条例」が施行しました。その具体化が求められていますが、身体・知的・重度心身障がい者は3桁の待機者が入所を待ち望んでいます。
 都立の新たな障害者施設の建設計画はありません。昨年都民と障がい者団体が求めていた精神障害者への医療費助成が1級に認められましたが、2級への適用は進んでいません。19年度は職員の確保・定着を図るために「障害福祉等職員奨学金返済・育英支援」の新規事業に6200万円計上しました。
□限界を超える国民健康保険料(税)、子どもからの保険料の徴収
 国民健康保険制度は18年4月から、都道府県が区市町村とともに運営主体となりました。しかし小池都政は国の制度をそのまま導入しています。
 東京22区(千代田区を除く)で生活をする給与収入400万円(所得266万円)の4人世帯の保険料は世帯所得の18%にもおよび、最も高い江戸川区では55万255円にもなります。これではまともな生活が営めません。保険料の滞納率は27・6%に及び4世帯に1世帯は滞納に陥っています。さらに国保は子どもからも保険料を徴収するという異常な制度です。協会けんぽ、健保組合、共済組合は子どもが何人いようとゼロ円です。ところが国保では、23区の場合1人で5万1千円、2人で10万2千円の負担を強いているのです。
 あまりにも高い保険料を軽減するために、都は国の指導に従って18年度は「国保新制度移行支援金」を14億円支出していましたが、19年度は10・9億円に減額、6年間で支援制度を打ち切ろうとしています。
□東京の病院病床の削減、都立病院の地方独立法人化の検討が本格的に
 安倍内閣が「地域医療構想」で全国の病床を32万床削減する計画を進める中で、国はこれでは病床削減が進まないということで、公立病院が率先して稼働していない病棟病床を返還しろと通知し、小池都政は3月、公社の荏原病院45床、豊島病院32床を返還。民間病院の病床削減を引き出すためです。又、東京都は都立病院の直営をなくし、8病院全部を地方独立行政法人化に転換するために、検討を加速する予算を19年度1億6千万円計上しています。

Ⅲ 教育、労働、中小企業、農林水産

□グローバル人材、英語・理数教育に傾斜、体育館にエアコン設置へ
 小池都政と都教育委員会の教育方針は、グローバルに活躍する人材の教育、産業を支え高度な情報化で活躍できる理数・英語教育が中心です。20年度から小学校で必須化される「プログラミング教育」「都立高校スマートスクール構想」、英語教育推進のための「東京グローバル10」「東京イングリッシュ・エンパワーメント」など新規事業や予算の増額を行っています。父母や教員、都民から切望されている35人学級の導入の予算は組まれていません。
 教員の勤務実態は過労死ラインを越える過重労働の実態が明らかになっていますが、改善が進んでいません。東京都は新たに「新財団(東京学校支援機構)」を19年7月に設立することを発表、教職員の処遇改善になるのか見極める必要があります。19年度予算では、都民と父母の強い要求で公立学校の体育館、特別支援教室、給食調理室の空調設置などが実現し135・7億円が計上されました。
□非正規雇用の正規化は達成されたのか、テレワーク推進に傾斜する小池都政
 東京都の非正規労働者は245万1千人(18年10~12月)で雇用者の34%を占め、前年同月から15万9千人増加しています。
 昨年廃止された「正規雇用等転職促進事業」は19年度も廃止のままで、代わりに正規に転換した後の「正規雇用等転換安定化支援」が昨年は24・3億円だったが19年度は14・9億円に削減されました。一方、小池都政はテレワーク推進に予算を振り向け、最低賃金の改善や長時間・ブラック規制、外国人の人権を守る予算は組まれていません。
□中小企業対策は成長産業・観光に力点、農林水産は従来水準に
 東京都は昨年「中小企業・小規模企業振興条例」を制定、今年「中小企業ビジョン」を発表。そこでは成長戦略、ベンチャー起業、ICT・iot活用が中心で、東京の中小企業の8割を占める小規模企業・商店街の振興策と支援策は乏しく、19年度予算では観光産業の振興、MICE誘致の予算が増額されています。
 農林水産業も178・3億円と7・2%増と、一般会計の0・24%に過ぎず、大都市にふさわしい振興策は打出されてはいません。

Ⅳ 多摩・島しょ、基地

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□多摩・島しょの市町村の交付金・産業振興で増額、最大予算はインフラ整備
 市町村総合交付金は10億円積み増しして560億円、産業拠点整備、MICE拠点育成で予算が増額されていますが、最大の予算額は多摩南北道路、港湾・空港整備で1313億円を計上しています。
□CV22オスプレイの横田基地配備の中止を求めず
 昨年10月、米軍は「空飛ぶ棺桶」と言われる危険なオスプレイCV22を5機横田基地に配備し、その後、低空飛行や夜間飛行、降下訓練、振動、騒音、など被害と事故が広がっています。しかし、小池知事は人命に関わる事故であり、あってはならないと発言していますが、横田基地の撤回は求めず、基地対策費は5200万円だけです。




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