2019年度東京都予算 拡大する「成長戦略」と東京大改造 都民のくらし守る自治体本来の役割を果せ!
2019年5月15日


 小池都政が2年半を過ぎ、来年は都知事選挙を迎える。3月28日に「2019年度東京都予算は可決決定されました。
 安倍政権は、9条改悪を執拗に追い求めながら、同時にアベノミクスによる「成長戦略」を掲げ、東京一局集中を大規模に推し進め、同時に「全世代型社会保障」の改悪、「働き方改革」の名による過労死に繋がる無制限なただ働きの容認、「地方創生」で地方自治の破壊と国の支配の強化など暴走政治が進められ、国民のくらしは落ち込み、貧困と格差が広がり、平和と民主主義の危機が迫ってきています。
 しかしこのような事態に、小池都政は、安倍暴走政治に対抗し、地方自治の使命である住民の福祉を増進するという役割を果たしてきているのでしょうか。

Ⅰ アベノミクスと一体となった「成長戦略」の拡大と、2020オリンピックを「跳躍台」とした大都市改造

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□過去最大の予算規模と投資的経費

 予算規模は、一般会計7兆4610億円で、昨年より4150億円増(+5・9%)で過去最大(これまでの最大は1992年、7兆2314億円)、全会計で14兆9594億円となっています。
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□「稼ぐ力」=「成長戦略」の拡大を最重点に予算編成

●「実行プラン2019年度」は成長戦略の事業費に70%

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常盤橋地区再開発(三菱地所資料)
 小池知事は16年に「『新しい東京』2020年に向けた実行プラン」を発表しました。この「実行プラン」では東京の成長戦略の方向性として、アベノミクスと一体となって、持続的な成長路線に結びつけ、東京を我が国の成長のエンジンと位置づけ、都内GDPを120兆円にチャレンジするとしています。「実行プラン2019年度」も4カ年総事業費として6兆7728億円、成長戦略には、インフラ整備+オリンピック+防災= 67・5%で約7割を占めています。【グラフ参照】(各事業は重複予算も含む)
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●「東京と日本の成長を考える検討会」と国際金融・経済都市東京の加速化

 小池知事は18年6月「東京と日本の成長を考える検討会」を立ち上げ、検討委員会には、森記念財団都市戦略研究所理事で、東京大改造計画の中心人物である市川宏雄氏をはじめ、財界のメンバーが参加し、10月に報告書が出されました。
 ここでは、「東京と日本の成長に必要な取組」として、羽田空港の機能強化や外かく環状道路の早期整備など6つの分野で20兆1000億円、2020オリンピック大会で20兆4000億円の経済効果を計算しています。
 19年度の予算では、成長戦略の要として小池都政が推進する「国際金融・経済都市東京の加速化が強く打ち出されています。金融プロモーション組織を立ち上げ、特区による海外企業誘致など27億円を計上しています。このため新たに「戦略政策情報推進本部」を設置し、実現の加速化を図るとしています。
 ここにあるのは、典型的な“トリクルダウン”の考えです。大企業や富める者が富めば、貧しい者へ自然と富が滴り落ちるとする経済理論です。しかし、現実は、大企業の内部留保は446億円(17年度末)にのぼり、国民のくらしは落ち込んでいるのです。

□「国家戦略特区」で東京一局集中を加速させる東京大改造

●5年連続1兆円を超え、過去最大の投資的経費

 19年度予算の投資的経費は過去最高の1兆3269億円を計上しています。2020オリンピックの経費が19年度に集中するため増大したとしていますが、過去5年連続1兆円を超えており、「国家戦略特区」と「成長戦略」の拡大が投資的経費の増大を牽引しています。
 投資的経費は、東京一極集中を加速する大規模開発・インフラ整備の経費と、都民生活密着型公共事業経費と大別されますが、中心は大規模再開発・インフラ整備です。
 道路街路の整備で2171億円、外かく環状道路工事で136億円、特定整備路線で576億円、臨海開発・大型クルーズ船ふ頭整備で461億円などが計上されています。一方、都営住宅の新規建設は20年連続ゼロ、防災関連事業では、調整池・中小河川の整備など749億円、耐震改修などで277億円となっています。都民の運動で実現した防災にも役立つ公立学校の体育施設へのクーラー設置については136億円が計上されています。

●成長戦略の切り札に「国家戦略特区」の拡大

 第2次安倍政権でスタートした「国家戦略特区制度」は、政府・中央主導=総理直轄の推進体制で大胆な規制緩和・制度改革断行を図り、民間デベロッパー主導の大規模再開発に完全に切り替わったのが特徴です。小池知事は「国家戦略特区」の活用を繰り返し強調し、都庁に「東京特区推進共同事務局」を設置(16年10月)し、石原都政時代と違った、財界と民間デベロッパー、安倍政権と一体となった“小池版都政東京大改造”時代を作り出しています。「国家戦略特区」の扱う事業の大半は、規制緩和を軸とした民間デベロッパー主導の都市再生プロジェクト・大規模開発で、ここに都財政も注ぎ込まれています。国家戦略特区制度で認定された事業は、大手町(常磐橋)地区をはじめ39件の大規模プロジェクトで、都内至る所で工事が進んでおり、小池都政は経済波及効果を14兆円になるという試算しています。

□膨れあがるオリンピック経費、選手村都有地の投げ売り疑惑が浮上

●2020大会総合経費を、東京都は1兆4100億円と見込んでいるが?

 18年12月、国・組織委員会・東京都は2020大会経費を1兆3500億円(V3)と確認し、東京都は負担する経費を大会経費6000億円、大会関連経費を8100億円、総合経費1兆4100億円と発表し、19年度は5330億円計上しました。
 東京都の大会関連経費も大雑把に見積もられたもので暑さ対策などはこれからの課題で、全体として1兆4100億円を超えることは明らかといえます。
 さらに問題として浮上してきているのが「オリンピック選手村」の都有地投げ売りの疑惑です。現在「晴海・正す会」が裁判を行っていますが、129億円で売られた都有地は「会」の鑑定では1611億円と鑑定され、「モリ・カケ」問題の18倍にも昇る疑惑です。東京都が黒塗りで情報公開した「調査報告書」が暴露され、東京都と業者の出来レースだったことが明らかになっています。《週刊文春19年5月2・9日号》

□二重に公約を裏切る小池知事の豊洲移転と築地の再開発の決定

●都民の反対と公約を裏切って、築地市場を豊洲に移転を強行

 小池知事は17年6月20日、市場問題の基本方針として「築地は守る、豊洲は活かす」「築地に市場機能を持たせる」と表明しましたが、その後公約を覆し18年10月11日に築地市場を豊洲に強行移転しました。しかし、豊洲は土壌汚染・地下水の汚染は未解決、脆弱な地盤、ひび割れや床の耐荷重不足、有害な粉塵の発生など施設の構造的欠陥が明るみに出され、食品をあつかう市場としては不適格であることは明らかになっています。
 築地市場跡地を中央卸売市場会計から、一般会計に有償所管換えを行う18年度補正予算審議で、小池知事は「基本方針」は変更していないと強弁し、二重に都民と市場関係者を裏切ること強行しました。

●「築地まちづくり方針」は築地を大規模集客施設・ホテルなどの再開発に

 小池知事は19年度予算決定の直後、築地市場跡地を再開発用地としてデベロッパーに明け渡す「築地まちづくり方針」を決定し発表しました。
 小池都政は築地地区を、日本と東京の活力を牽引するエンジンとなる国際ビジネスゾーンとして再開発を行い臨海部副都心とともに拠点として、MICE(大型国際会議場など)やホテルを建設しようとしています。小池知事は築地の市場機能を持たせないと言い切りました。


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