~連載(第13回)~ 検証 革新都政その後 鈴木都政16年⑪ 減量経営①
2019年5月15日


 経済社会の変化に対応して、ゼロベース的な視点で常時事務事業の見直しを行い、そのスクラップ・アンド・ビルドを積極的に進める考えであります(略)さらに都民の皆様に対し、行政サービスの内容と水準、また受益と負担について厳しい選択をお願いすることも避けて通れないと考えております。
 鈴木俊一都知事(1979年第2回定例都議会)


 財界、自民党政権の期待を担って登場した鈴木都政が真っ先にとりくんだのが、サッチャー英国首相・レーガン米大統領・中曽根首相がおしすすめた福祉国家否定と小さな政府、民活路線の具体化でした。
 鈴木知事は就任と同時に、知事の私的諮問機関として「東京都財政再建委員会」
(稲葉秀三委員長1979年)を設置するとともに、1983年には同じく私的諮問機関「活力ある都政をすすめる懇談会」を設置。
 このうち「都財政再建委員会」は、財政健全化の具体的手法として①職員定数の削減、給与費の見直し、組織の簡素化、徴税努力、財産活用などの内部努力に組織を挙げて取り組む、②事務事業全般にわたってゼロベース的視点から総点検を行い、大胆なスクラップ・アンド・ビルドを実施。住民間の負担の公平という見地から受益者負担の適正化を図る、③地方自治強化の立場から都と区市町村との役割分担を見直し、区市町村に対する都の財政負担の適正化を図る、④税財政制度の改善…を提案。「活力懇」は民間活力の活用、減量経営の強化、定期的な料金値上げ、大企業主導型都市改造の推進などを提案しました。
 こうしたお手盛りの答申にもとづいて鈴木都知事はさまざまな「行革手法」をもちこみ減量経営と民活路線を推進しました。

総定数抑制政策


 減量経営の矛先はまず「財政再建委員会答申」でいの一番に掲げられた職員定数に向けられました。
 鈴木知事は、手はじめにはじめて編成した1980年度予算で都立病院関係での309名重度精神薄弱児収容施設「東村山福祉園での25名の定員削減、老人ホームや看護専門学校給食などの民間委託など大切な福祉・医療の現場での定員削減を強行。その後の16年間で都の職員定数(知事部局・公営企業局・警察・消防、学校職員など総計)を2万3049人、1割(1979年度22万333人↓1995年度19万7284人)も削減したのです。
 この点について、青島都政下で財務局主計部長を務めた木内氏は「当時の状況の中においては、一番大きな効果といいますのは、定数の削減であったのかなというふうに思っております。財政再建委員会の答申を受けて、昭和55年から58年度までの四カ年において9千255名、当時の総定数に対しては4・2%の純減を図った」(1997年11月・行財政改革基本問題特別委員会)とあからさまに成果を誇っています。都民のための福祉や教育などの職員を削減する一方で、開発部門は聖域化し臨海副都心開発などには手厚く職員を配置したのです。

手段を選ばない「行革」手法


 鈴木都政はまた、国の「第2臨時行政調査会」や「第1次臨時行政改革推進審議会」などの提言、「行政改革大綱」(1985年)などの誘導・推進役を担い、「行革」手法を都政で実践することで、「住民の福祉の増進」を責務とする地方自治体の変質・破壊をすすめ、全国の自治体の牽引者、お手本となったのです。

スクラップアンドビルド

 あらたな施策を実施するときは既存の施策を廃止することを求めるという考え方にもとづくものですが、鈴木都政では、都民サービスにかかわる職員定数や事業はどんどんスクラップがかけられる一方、ビルドされるものは開発行政で、民活方式による外部委託や第3セクターによる事業は矢継ぎ早に実施されました。

サンセット方式

 事業について終期を設定し、その期限が来たら自動的にその事業を廃止するというもの。1976年にアメリカのサンフランシスコ州が導入したサンセット法がはじまりです。しかし、その本家アメリカでは、①法律を制定して実施すること、②期限を迎えたときには第3者による事業の評価をおこなうことが通常で、効果が認められないためサンセット方式を廃止した自治体も少なくありません。
 また、事業の名目・名称だけを衣替えして、あたかも新規に事業を立ちあげたかのようにごまかすやり方もまかり通っています。

ゼロベース・予算のシーリング

 ゼロベースは予算の編成にあたって既存の事業をふくめてゼロから検討するやり方で、シーリングは各部局の予算に一律に上限枠(前年比マイナス○○%など)を定めるものです。これらによって事業のスクラップアンドビルドが自動化することになります。
卯月はじめ


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