レポート 北海道胆振東部地震教訓を防災に役立てるために
2018年11月15日


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札幌市清田区液状化した地域
 阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などにつづく最大震度7を記録した北海道胆振東部地震(10月6日発生)。
 震源地にあたる厚真町や鵡川町では、山林で人家をまきこんだ大規模な土砂崩れや住家の倒壊などが発生。震源から50キロ以上も離れた札幌市でも住宅団地が液状化によって甚大な被害を受けるなど、死者が41名(うち厚真町36名)にも及ぶものとなりました。
 同時に、今回の地震では火力発電所が被災することで北海道全域が停電する日本でははじめての「ブラックアウト」が発生。市民生活や医療現場、搾乳など酪農などにも深刻な被害をもたらすことになりました。
 今回の地震は、熊本地震のような地表面での活断層のずれによって起こされたものではなく、海側の太平洋プレートによって押され歪みを蓄えていた陸側のプレート内部でおきた内陸直下型地震とされています。
 また、震源が深度36キロの深いところであったにもかかわらず、大規模な土砂崩れや家屋倒壊、震源から離れた地域での被害などが発生した原因として、震度が7の激震であったことにくわえ、揺れを伝えやすい北海道特有の地盤特性、さらには夏以降の雨降りと地震の前日の台風21号の襲来などで「表土が大量の水分を含んでいた」(厚真町)ことが指摘されています。
 このような被害がもたらされた被災地を調査するため10月の24・25日に現地調査を実施しました。調査には全国災対連をはじめ東京災対連、日本科学者会議、新建築家技術者集団、新婦人の会記者、日本共産党国会議員秘書など8名が参加。札幌市清田区、鵡川町、厚真町を踏査しました。

液状化で地盤流出 札幌市清田区
 札幌市清田区里塚の戸建て住宅団地では、今回の地震で液状化が発生。数多くの住宅が2mにも及ぶ地盤沈下によって傾き、全壊=危険判定の張り紙(赤)が軒並み張られていました。清田区の被害の特徴は、阪神淡路大震災や熊本地震などと違って建物がぐしゃっと潰れる「層破壊」は見られず、地盤の傾斜にそって斜めに傾く被害となっていました。
 この住宅地は1960年代以降に宅地開発されたところで、元々は川があり水田もあったところを宅地造成したもので、開発にあたって川を暗渠として埋め込み、その上に盛り土して販売したものです。
 沈下の状況は写真の横線が地震前の地盤の位置で、地震で矢印の下まで地盤が沈下したことになります。
 なぜ、このような沈下が発生したかというと、液状化した土砂がかつての川筋にそって流失したためと考えられています。
 写真の手前の住宅は沈下による傾斜を免れていますが、これは液状化対策として杭をしっかりと打ち込んでいたからです。この地域は以前にも液状化被害を受けていますから、液状化対策を事前に講じることによって防ぎ得た「人災」であったということができます。

ピロティ式住宅の倒壊 鵡川町
 震源に近い鵡川町では、駅周辺の商店街を中心に被害が集中。原因は、2階建ての住宅のうち1階部分が店舗や車庫などとして使われ、柱や壁が少ないピロティ式建築となっていることです。その耐震強度の弱い部分に揺れの力が集中することで倒壊に至るのです。これも阪神淡路大震災などで被害が報告されていたものですから、避けられた被害ということができます。

異常気象と地震がもたらした土砂災害―厚真町
 テレビでもくり返し報道された厚真町の山林崩壊では、山の際に点々と建てられた農家が土砂によって潰されており、おおくの人の命が失われました。長雨と台風そして地震がもたらした災害ですが、地球温暖化の進行によって異常気象が異常でなくなってきている今日、山岳国である日本でどこでおきてもおかしくない災害形態ということができ、広島や福岡などでの土砂災害に学ぶことが急がれます。気象は科学的に解明、予知することできる分野となっていますから、自然現象としての異常気象を「人的災害」にしない事前予防は十分に可能です。
 調査では、現地の日本共産党の議員の方に案内をいただき、また、日本共産党北海道委員会との懇談をはじめ北海道労連、道民医連、北商連、北教組などの諸団体との懇談もおこない、被災者支援の状況やブラックアウトの被害、農業や業者の被災状況などをうかがうことができました。
 東京災害対策連絡会 世話人・末延渥史


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