~連載(第8回)~ 検証 革新都政その後 鈴木都政16年⑥ JAPICとの野合
2018年9月18日


 プロジェクトの具体化にあたっては、さまざまの障害があるのも実情であるが、これだけの大きな組織体であるJAPICとしては、どのような困難があろうとも、また、いかに時間を要しようとも一歩一歩前進し、(略)、決して功を急ぐことなく、着実に前進していきたいと考えている。斎藤英四郎JAPIC初代会長(新日本製鐵社長)

 鈴木都政と時を同じくして発足した日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は、日本を代表する鋼材倶楽部やセメント協会、銀行協会連合会などの団体会員、新日本製鐵や朝日セメント、鹿島建設、清水建設、三菱地所、森ビルなどの鉄鋼、セメント、ゼネコン・開発デベロッパーなど8業種・190団体でスタートし、4年後には通産、建設、国土、運輸の4省共管の社団法人となるなど官民共同の運命共同体として設立されました。

空に高く地に深く海に広く

 冒頭の発言は、発足翌年の第2回総会で斎藤英四郎初代会長がおこなったものですが、また、同氏は設立10周年記念誌「JAPIC
 10年のあゆみ」で、JAPICの10年が「国土の有効利用と社会資本の充実を図る各種大型プロジェクトを推進することを目的に、“空に高く地に深く海に広く”のスローガンと共に歩んだチャレンジの道程」と評価すると共に、「設立当初からの所期事業のうち関西国際空港、東京湾横断道路が事業化した」ことを誇らしげに語っています。
 JAPICの狙いについて、「JAPICの野望」(新日本出版社)では、「第一には、国鉄などの公営企業体をはじめ公共事業を民営化して(略)『民間活力』の活用という名目で分割支配して利益をあげようとする公的事業乗っとり。第二には、需要のないところに需要をつくりだすためには、民間の資金を導入すると共に、規制緩和をすすめ、あらたに民間に権限を付与して、東京湾横断道路、明石海峡大橋、首都圏中央連絡道路など大型開発プロジェクトの建設や都市再開発などを『ナショナル・プロジェクト』と位置づけ、4全総や政府予算に反映させて『国家計画』のよそおいをこらして計画を遂行」するものと指摘しています。

ターゲットは東京改造

 また、鈴木都政のもとで「東京都財政再建委員会」の座長を務めた稲葉修三JAPIC顧問は、「新宿に霞ヶ関ビルよりも大きな新しい(都)庁舎をつくる」「同時に渋谷とか池袋の近代化をやっていかざるを得ない」と述べていますが、その後のこの発言通りに新宿に豪華都庁舎が建設され、池袋と渋谷では、民間再開発と連動した超高層区庁舎などによる駅前の大規模な再開発がすすめられているのです。

築地市場の移転の野望

 稲葉顧問は、「築地の魚市場、神田の野菜市場、肉の市場を埋め立てた島に持っていき、大々的に河岸を造る」ことも要求しましたが、築地市場の廃止、跡地の再開発はJAPIC創立以来の野望であったのです。
 また、JAPICは「東京改造」ターゲットにして前述の事業を推進するとともに、「都市開発委員会」を設置して、鉄道駅の上部空間を開発する「軌道空間都市」、ビルの未利用容積を譲渡・活用する「空中権」、「駅を中心とする再開発」、震災に便乗した「震災と東京再開発」などのあらたな手法の開発を提唱し、「時間」をかけて「一歩一歩」実現させてきました。
 1983年に発表した
「東京再開発計画の一考察」にもとづく「震災と東京再開発」は、東京都心部での震災発生を「震災を契機とした首都改造計画」推進の好機として位置づけ、山手線と環状7号線の間に被害が集中し、50万戸が焼けてしまうとして、都内を3つの区画にわけて再開発を実施することなど提案しているもので、「ひとたび震災が発生した時、一挙にこの計画を進め、完成させたい」と震災による好機到来を期待していることをあからさまに表明しているのです。そして鈴木都政はこの主張を容認、木造密集住宅地域の対策をタナ上げしてしまったのです。
 鈴木都政以後の歴代都政のもとでも外かく環状道路、汐留再開発、臨海副都心開発などJAPICの計画通りに実現しています。鈴木都政はまさにJAPICと二人三脚で都民不在の東京の改造を推進したのです。
卯月はじめ

考証革新都政 “東京に憲法と自治が輝いたとき”を読んで

 革新都政が1967年から4期12年で1979年に終了し、その後38年がたち既に50年が過ぎた。1979年に弁護士になった私も含めて、革新都政のすばらしさ、先駆性を実感できない世代が圧倒的なため、是非多くの方にこの本を読んで欲しい。
 弁護士の私からは、「憲法をくらしに活かす」側面から紹介する。「ポストの数ほど保育所を」(64頁)は、女性の働く権利(憲法27条)を保障するために、ゼロ才児保育の実現、無認可保育所への助成など画期的な政策となった。また、高齢者・障害者の生存権(憲法25条)を保障するために福祉医療の総合施設の建設(74頁)、医療費無料化(75・78頁)を先駆けて実施した。教育の受ける権利(憲法29条)の視点から、都立高校の増設・私学助成の実現・父母負担軽減(83頁)も成し遂げた。
 特筆すべきは、これらの課題・政策は知事と都民・市民団体との対話・協議を通じた都民参加と、国の悪政と対決した地方自治の実現を通じて勝ち取ったことである。



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