都民の運動と世論が、都政を変え、東京を変える
2017年1月15日
都民のねがいと小池「実行プラン」が提案したもの
 小池知事は昨年12月22日に??都民ファーストでつくる「新しい東京」~2020年に向けた実行プラン~を発表しました。
 政策目標約500項目、4年間の総事業費を5兆6千億円で「3つのシティー」を実現するとしています。この実行プランは、舛添都政が発表した「東京都長期ビジョン」を継承し、小池知事のマニフェストを上書きするかたちで出された舛添長期ビジョンの「4カ年実行プログラム」としての提案です。
 小池知事は、選挙戦と都民運動を反映して、豊洲新市場移転については「立ち止まって」移転を延期し、オリンピック施設建設については、4者協議が進められています。保育の待機児の解消のために緊急対策予算を組みました。
 ここでは、革新都政をつくる会が昨年都民のねがいをまとめ、東京都へ提出した予算編成の主な重点要求と対比して、小池「実行プラン」の内容を明らかにします。

◇ ◇ ◇

○ 福祉都市東京の実現
・保育の質を守り、待機児童解消。保育従事者の処遇改善
・特養ホームなどで介護難民をなくす。介護保険料・利用料の負担軽減
・国民保険料(税)の引き下げと、強引な差押さえをやめさせる
・社会保障制度の改悪から都民を守る
・子どもの医療費の無料化

〈実行プラン〉
・多様な保育サービスで4年間で7万人分の増。19年度末で待機児童解消
・保育士等の人材確保は、キャリアパスに取り組む事業者に支援(舛添ビジョンと同じ)
・特養ホーム6万人分、介護老人保健施設3万人分、グループホーム2万人分(いずれも9年後の2025年度末までで舛添ビジョンと同じ)。介護人材の確保も国の介護キャリア段位制度に取り組む事業者へ支援(舛添ビジョンと同じ)
・国民健康保険料(税)の引き下げや、減免の拡大、差押えをやめるプランの記載はありません
・医療、介護、生活保護、年金など都民のくらしに直結する国の社会保障制度の改悪に対抗するプランの記載はありません
・子どもの医療費無料化に向けてのプランはありません
・「福祉先進都市実現」=4ヵ年・6600億円(舛添長期ビジョン=3ヵ年・2900億円)

○ 貧困と格差をなくす
・子どもの貧困をなくす
・非正規雇用の正規化、過労死・ブラック企業をなくす、最低賃金1500円の実現
・生活保護の切り下げに反対、低無年金者への支援

〈実行プラン〉
・「子ども・子育て施策推進本部」で子どもの貧困対策の様々な支援対策を検討。(子ども以外の、若者・女性・高齢者・障がい者・住宅などの貧困対策はプランにありません)
・求職活動を行う不本意非正規(17万人)を半減(83,000人、2022年まで)、正社員化した企業を支援。(舛添ビジョンと同じ)
・就業促進は掲げているが、長時間・ブラック労働の是正、最低賃金への取組はプランにありません
・生活困窮者に対する総合支援は、区市と町村への支援が掲載。目標値及び、生活保護者への支援はプランにありません


○ ゆきとどいた教育の実現
・公立小中学校及び高校での35人学級の実現
・不登校・学力不振・いじめをなくし教育の機会均等の実現
・都独自の給付制奨学金の創設
・高校授業料の無償化
・障がい者の生活できる環境の整備と障害児教育の充実
・夜間定時制高校の存続

〈実行プラン〉
・少人数でゆきとどいた教育を実現するための35人学級の実現はプランにありません
・全国学力調査、東京ベーシックドリル、習熟度別授業など競争をテコに「学力」向上をねらう施策が中心
・高校生を対象とした給付型奨学金制度等を創設・拡大(具体的には17年度予算に)
・高校授業料の無償化のプランは17年度予算で打ち出すとの報道
・アクティブラーニング、理数教育、ICT、英語教育、日本人としての自覚と道徳、学校マネージメント(教師力)など、「新学習指導要領」の先取り施策が盛り込まれる
・障害児教育は、特別支援教室の設置を、公立小学校は18年度、公立中学には21年度までに全校設置。従来の特別支援学級が解体。障がい者雇用4万人(24年度)、就労・定着支援6000人(20年度)グループホームなどの整備は舛添ビジョンと同じ。
・都立夜間定時制高校の廃止の復活はプランにありません


○ 営業・中小企業の振興
・中小企業・小規模企業振興基本条例、公契約条例の制定
・中小企業を重点施策の柱に、中小企業予算の抜本的拡充

〈実行プラン〉
・政策の柱に中小企業振興はなく、「国際金融・経済都市」で、政策目標の1番は「外国企業の誘致」とされています。成長産業の中小企業の参入や、中小企業の海外需要の取り込み、ベンチャー企業の創出が柱に。
・東京の中小企業の特性を生かした条例や公契約条例の制定のプランはありません

○ 災害対策・首都直下地震への備え
・木造・マンション・集合住宅の耐震化の抜本強化
・防災に名を借りた特定整備路線の中止
・感震ブレーカーの設置、可動式ポンプ車や地域の消防体制の強化
・災害時要援護者対策の強化

〈実行プラン〉
・住宅の耐震化(舛添長期ビジョンと同じく95%以上)。木密地域不燃化10年プロジェクトを継承し、すべての木造住宅を対象とした耐震助成のプランはありません。
・特定整備路線は28区間・約25kmを強引に全線整備(2020年度まで)
・火災発生時に有効な感震ブレーカーの設置の目標はありません。住民参加型防災訓練年4回、「自主防災組織活性化サポートガイド(仮称)」の作成配布
・高齢者・障害者等の要援護者のための協力体制づくり、施設等の自主防災訓練、目標値はありません
・無電柱化促進の条例化。


○ 住まいの保障
・都営住宅の新規建設の再開
・都営住宅用地の民間プロジェクト開発の中止
・民間賃貸住宅居住者への家賃補助制度
・空き屋対策の強化

〈実行プラン〉
・都営住宅の新規建設のプランはありません(建て替え戸数は従来通りの年3800戸程度)
・北青山三丁目都営住宅を民間プロジェクト開発へ提供。長房団地を民間プロジェクトによる事業化
・日本一高い東京の民間賃貸住宅家賃補助のプランはありません
・空き家対策の実施主体の市町村に実態調査、計画費用の助成など利活用支援


○ 多摩・島しょの振興
・多摩振興・格差解消のための市町村財政の基盤の強化
・島しょの水産・観光業振興、津波・地震・土石流災害の対策の強化

〈実行プラン〉
・多摩ニュータウン地域の再生ガイドラインの作成と都営住宅の建て替え(20~24年度)
・多摩・島しょ地域の地震・津波等の対策
・多摩島しょの事業費は舛添長期ビジョンより、1年当たりに換算すると約700億円減額されている


○ 国際金融・大改造計画の見直し
・オリンピックを起爆剤とした東京一極集中を加速する東京大改造計画の転換
・アベノミクスと規制緩和に連動した国際「金融特区」の中止
・外かく環状、環状2号線、特定整備路線、優先整備整備路線の中止・再検討
・都市開発・超高層ビル建設で加速する地球温暖化・ヒートアイランド現象の防止のために総量規制と成長管理への転換
・最大の環境破壊をもたらす原発依存をやめ、自然エネルギーへの転換を促進する

〈実行プラン〉
・東京大手町2丁目の常盤橋再開発(高さ390m、延面積68ha、容積率2,200%)に代表される、多様で拠点機能を集積した20カ所の再開発プロジェクトを計画(舛添長期ビジョンでは19カ所)→「都市づくりグランドデザイン」策定。東京一極集中の是正はプランにありません
・アジア・ナンバーワンの国際金融都市東京の実現のために、海外金融系40社、IOT系企業の誘致促進40社、外国企業誘致社数400社(2020年まで)
・三環状道路・幹線道路の整備、次世代交通システムの導入、東京港・空港機能の強化、など都市インフラ整備・建設(4カ年で9800億円)
・再生可能エネルギー電力30%(2030年)。原発についてプランに記載はありません


○ 豊洲新市場移転を中止し、築地現地再整備を
・豊洲は食品をあつかう市場としては不適格、築地で再整備を
・豊洲新市場の汚染・安全対策、土地購入、工事契約についての徹底検証と公表

〈実行プラン〉
・「専門家会議」と「市場問題プロジェクト」の検証結果をふまえ、環境アセスメント議の結論が得られた段階で、総合的な観点から移転するかどうか判断する
・豊洲市場への移転の環境が整えば、早ければ2017年の冬か2018年春移転へ


○ 五輪憲章とアジェンダにもとづいた大会の開催を
・世界平和の実現・貧困の根絶などを掲げた五輪憲章とアジェンダの実現
・過大な計画となっている競技施設、仮設施設、選手村など徹底して見直し、経費を節減すること
・公正で透明度の高い、都民参加による大会準備と運営

〈実行プラン〉
・競技会場・選手村を着実に整備、後利用を有効活用としているが、選手村は住宅・商業等のユニバーサルな複合市街地として、官民連携して開発する
・都が発掘・育成・強化するオリンピックアスリートは100人、パラリンピックは25人
・都民のスポーツ実施率70%(2020年)を掲げる。都民が身近で気軽に楽しめる施設の建設目標はプランにありません


○ 憲法を守り、戦争のない平和な東京
・東京非核・平和都市宣言を行い、核兵器のない世界を
・都民を危険にさらすオスプレイの横田配備の撤回、横田基地を始め米軍基地の返還

〈実行プラン〉
・「横田基地の軍民共用化」を提唱。オスプレイ・基地返還については一切の記述がプランにはありません


小池「実行プラン」が示す東京の将来像
アベノミクス「成長戦略」のトリクルダウンが軸に


406-03
図 単位:億円
 「実行プラン」は第3章で「東京の成長戦略の方向性」を打ち出しています。
 そこには、「我が国の経済はアベノミクスにより企業収益が最高水準に達し、経済再生・デフレ脱却に向けて着実に前進している。回り始めた好循環を、政府が打ち出した戦後最大の名目GDP600兆円(日本再興戦略2016)の実現に向けて、首都東京は日本経済の中心で、我が国の成長のエンジンとして先頭に立って取り組み、他の地域のモデルとなることが求められている」としています。
 そのために「4つの挑戦(challenge5)」と「5つの戦略(FIRST 戦略)」を掲げ「東京が世界で一番になる」「我が国の成長創出のために東京が先頭に立って挑戦する」として、都内GDPの26%増(120兆円)などをめざすとしています。
 これは「東京の成長戦略」が「あたらしい東京」をつくり、これによって利益をあげた大企業の儲けの一部がしたたり落ちる(トリクルダウン)ことによって都民も潤うという考えです。
 さらに、東京の未来像「Beyond2020」では、「国際金融・経済都市の地位を確立した未来の東京は、世界からヒト・モノ・カネ・情報などを引き寄せ、新たな付加価値を生みだすことによって世界経済の主役であり続けます」としています。ここには、都民のくらしや福祉への思いは見あたりません。
 東京は、莫大な富を蓄積するグローバル巨大企業と富裕層が増大していますが、一方で、多くの都民が非正規雇用や低賃金、長時間やブラックな労働、子どもから高齢者までの貧困の増大、待機児の拡大、医療難民・介護難民の増大、消費税の引き上げで苦しいぎりぎりの生活を余儀なくされています。
 小池「実行プラン」の4年間の総事業費は、5兆6100億円です。その内、「福祉先進都市の実現」は6600億円です。全体の12.9%に過ぎません。圧倒的に東京大改造計画を含むインフラ整備事業費です。【図―参照】
 小池都政の数ヶ月の都政運営からは、都民の運動と世論を反映した変化を見てとることができます。同時に、「実行プラン」は、小池都政の大きな流れが自公都政、石原・猪瀬・舛添都政が進めてきたプランや長期ビジョンと変わるものではないことを示しています。
(2017年度予算知事案1月25日発表予定)

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