「道徳の教科化」と子どもの発達~ 人間として大切育てることになるのか?
2016年11月15日
文科省は再来年から「道徳」を「特別の教科」として、教科書を使って授業を行い、学んだことをどの程度「実践」し、「習慣化しているか」を文章で「評価」すると発表しました。東京都は、「道徳」指導の冊子を作り、夏休みに全校の「道徳推進教師」を集めて数日間の研修を行い、その内容を各校で報告させました。
来年採択される教科書の内容はまだ不明ですが、いま使われている東京都や文科省の副読本では、先人やスポーツ選手の言葉を引用して「今のままではダメ、もっと頑張れ」と叱咤激励したり、「喧嘩しないで仲良く」「法やきまりを守ること」を強調する内容が多いです。
また、文科省の「研究開発校」として「道徳」にとりくんでいる小学校では、年間45時間(通常35時間)の「道徳」のうち15時間を「礼法」の時間にして、1年生のうちから、「先言後礼」(先に「ありがとうございました」と言ってお辞儀する)など、形から入る指導を徹底しているそうです。
自立して生きること、他者との信頼関係を築くこと、「思いやり」のある人になってほしいなど、誰もが子どもに望むことですが、自分を大切にする気持が育つ中ではじめて他者に対するやさしさが生まれてくるのではないでしょうか。時には仲間とぶつかりあい、それを解決しながら成長していくものではないでしょうか。そうした子どもの発達の筋道とはかけ離れたことが「教育」の名でおしつけられようとしていることが、とても心配です。【糀谷陽子・都教組副委員長】