~連載(21)~ 考証 革新都政12年 革新都政が実現したもの(8)―― 生活の防衛
2016年6月15日


 戦後のわが国の経済発展は、急行列車・新幹線なみのスピードで走ってきた。(略)とりわけ昭和30年代後半から日本列島をブルドーザー付き超特急の高度成長経済列車がフルスピードで走り回ったが、その反面、列車に乗りそこねたり、振り落とされた、跳ね飛ばされた階層の人々が、社会の底辺にたくさん置き去りにされた。
 すなわち、所得格差の拡大、公害や生活環境の悪化、インフレによる物価高騰などが国民を脅かした。
 太田久行 美濃部都政12年

 失敗を恐れていられない。インフレがここまで悪化したからには、都民生活防衛のため、なりふりかまわず、なんでもやってみる。
 美濃部亮吉都知事

 革新都政がその一歩から直面することとなったものがインフレ・物価問題でした。とりわけ、世界に激震を走らせた1971年末の「石油ショック」は東京の経済と都民生活に深刻な打撃をあたえ、都民は〃狂乱物価〃のただなかに置かれることになりました。
 こうしたもとで美濃部知事は、知事就任直後に、物価問題をテーマにした都民集会を開催、消費生活対策審議会(消費物資対策審議会を改組)や消費者被害救済委員会、消費生活センターの開設、食品物価Gメンの配置など機敏に対応するとともに、〃狂乱物価〃に対しても生活を守る都民会議や物価局の設置、緊急生活防衛条例・消費生活条例の制定など都民生活を守るために全力をつくしました。

 嬬恋キャベツはじまる

 具体的には、東前都政では「標準小売店制度」「安売りデー」などでお茶を濁していた物価対策を本格化させ、トマト・キュウリ・ピーマンなどの野菜、鶏卵、トロロコンブ・ノリなどの乾物を市価の2~2割5分安く販売する「産地直結安売り」(1970年5月開始)や、生鮮食品の価格暴騰から家計を守るための「産地契約方式」(生産者に価格暴落時の価格を補償することで、暴騰時の出荷価格を抑制する。嬬恋キャベツからスタート1973年8月、ジャガイモ・タマネギ、イカ・サンマ・エビにも拡大)、保存のききやすい野菜を安値のときに大量に買いつけ、都内の冷凍・冷蔵庫に保存しておき、価格が高騰したときに、市場に放出することで値上がりを抑える「ストックポイント方式」などにとりくみ、都民とりわけ台所を預かる主婦に喜ばれました。
 東都政のときには、1000万円(安売りデーの看板、チラシ代補助)だった予算が、革新都政では、生鮮食品の安値補償、買付費用だけで30億円にも拡充されることになりました。
 流通の改善でも、世田谷・板橋の中央卸売市場の開設や、消費者に生鮮食品などの良い品を適正な価格で提供することを目的にした公設小売市場も3市場(区営市場とあわせて13市場・第1期)も開設されました。

 一般家庭は据え置き

 国のインフレ政策のもとで、東京都の公共料金も引き上げを余儀なくされましたが、革新都政は都民生活をまもるために公共料金の値上げ幅を極力抑えるとともに、生活困窮者などへの配慮を忘れませんでした。
 例えば、交通料金では改定にあたって身体障害者や生活保護世帯への無料パスの交付、水道料金の値上げにあたっては、生活を営むための必需品として消費する「水の利用者」と利潤をあげるために消費する「水の受益者」にわけ、前者の生活用水についてはできるだけ料金を据えおき、後者の営業用水は大幅に引上げることなどをおこない、一般家庭の場合、1ヶ月平均使用水量までは料金据え置き、生活最低必要量(小口径・1ヶ月8トン未満)の水量(従量)料金は無料、生活保護世帯や母子世帯はさらに固定費も免除、公衆浴場や長屋、アパートなどの共用水栓も据えおかれました。
 知事が料金を決定する公衆浴場=銭湯についても、生活保護世帯への浴場利用券の配布、業者への融資の利子補給、下水道料金の軽減などを実施、庶民の生活を守るために手立てをつくしたのです。
狂乱物価



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