~連載(18)~ 考証 革新都政12年 革新都政が実現したもの(5)―― 障がい者に生きる権利を
2016年3月15日
この子を残しても安心して死んでいける政治が欲しい
日本の障害者(児)の政策・施策は、戦後の新憲法と身体障害者福祉法の成立にはじまります。それまでの障害者への対応は「家族依存」が大前提とされ、障害者の「保護」はもっぱら民間の篤志家や社会事業者に委ねられていました。国家施策としてあったのは、わずかに傷痍軍人を対象とした軍事扶助法のみで、一般の障害者については救貧対策(「恤救規則」「救護法」)による救護にとどめられ、「路上の狂癩者の取扱いに関する行政警察規則」による治安・取締りの対象ともされていたのです。
そして新憲法下の戦後も、国・東京都は障害者に冷たい姿勢をとりつづけ、冒頭の悲痛な叫びがあげられることとなったのです。
こうしたもとで誕生した革新都政は、「東京の繁栄。そこにはたいへんな貧困がかくされています。とりわけ社会保障の立ち遅れのため、身体や精神に障害をうけている人々は生存の権利すらもおびやかされています」(スマイルと決断)として、障害者対策を都政の重要課題のひとつとして位置づけ、とりくみを開始することとなったのです。
美濃部都知事は、就任早々に、日比谷公会堂で開催された身体障害者福祉大会に出席。「それまでの東京都の身障者対策は再検討」が必要と述べ、翌年2月には「臨時心身障害者対策本部」を立ちあげ、実態調査を実施するなど、「本腰を入れた取り組みを開始」(美濃部都政12年・大田久行)することとなったのです。
都民運動を力に
革新都政が実施した施策は、全国に先がけた心身障害者の医療費無料化、同扶養年金をはじめ、そのおおくが「障害者の生活と健康を守る全都連絡会」をはじめとする都民運動を背景に実現されたものです。
革新都政の実現とともに障害者運動の発展の中で、この数年間に都政の障害者福祉施策は大きな前進をみせ、障害者会館の建設、障害児学級の増設、都電、都バスの無料化、障害者の働く場所の保障、障害幼児の民間保育に対する援助など、障害者と家族にとって大きな期待と希望がもてるようになりました。
(東京の社会福祉運動)
生活支援・心身障害者扶養年金(障害者の両親が死亡した時に毎月2万円支給)
・重度心身障害者(児)手当
・緊急一時保護制度
・愛の手帳交付
社会参加・都営交通の無料パス
・生活実習所開設
・手話通訳派遣事業
・盲導犬の育成と貸与
・補装具研究所の開設
・自動車改造費の助成
・障害者のための街づくり(都道の段差解消など)
在宅支援
・ホームヘルパー常勤化
・福祉電話の貸与
・日常生活用具の給付
・在宅心身障害者福祉手当
・住宅改造費助成(風呂場・トイレなど)
・車イスで暮らせる都営住宅建設
就労
・用賀技能開発学院設置
・福祉作業所、福祉授産所、福祉工場の開設
医療
・心身障害者医療費無料化
・府中療育センター開設
・自閉症専門病院開設
・心身障害者総合研究所開設
施設拡充
・通勤寮(3)・生活寮(1)の設置
・心身障害者福祉センター、障害者福祉会館の開設
・民間施設職員の公私格差是正事業
教育
・希望者全員入学
・養護学校の増設(1C→35)
・在宅重度障害児のための訪問教育
・スクールバスの配車etc
いずれも障害者(児)の生きる権利の具現化です。
“おかげさまで、私が死ぬ前にこの子を殺さないですみました”
都知事に寄せられた手紙