都民のねがい くらしを豊かに 平和で希望の持てる東京に
2015年1月15日
2015年 都民の運動を強く大きく

アベノミクスと一体の「東京大改造計画」が目白押し
保育、特養など都民の要求と運動の反映も

舛添都政が長期ビジョン発表
 舛添都政は、昨年12月25日、~「世界一の都市・東京」をめざして~を表題とする「東京都長期ビジョン」を発表しました。長期ビジョンは2015年から24年までの10年後の姿をしめし、2つの目標として、(1)史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現、(2)課題を解決し、将来にわたる東京の持続的発展の実現を掲げ、5つの視点、8つの都市戦略、25の政策指針、360政策目標の数値化を打ち出しています。加えて3ヵ年計画の実施計画を組み、3ヵ年と2015年度の事業費を計上しています。

安倍政権と財界がめざす「世界で一番ビジネスのしやすい東京」づくり

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 「長期ビジョン」は東京オリンピックを起爆剤に、東京が都市間競争を勝ち抜き、日本経済の成長を牽引するとして、国家戦略特区制度を活用し10地区に国際ビジネス拠点プロジェクトを設定し、ニューヨーク・ロンドンと並んで東京を国際金融センターに復活させるなど、グローバル巨大企業を呼び寄せ、「世界をリードするグローバル都市の実現」を最大の目標に掲げています。
 安倍政権も昨年の「日本再興戦略改訂2014」で、「稼ぐ力」を取り戻し、東京を中心に世界ビジネス環境ランキング・都市総合ランキングで3位をめざすとして、国家戦略特区の実現、産業インフラの整備を重点に掲げています。また財界も、「経団連ビジョン*1」で「企業にとってオリンピック・パラリンピックは大きなビジネスチャンス」であり、都市は「世界から幅広い企業・人材を集め、…グローバル拠点として、世界の都市間競争で優位」を形成するとしています。
 「長期ビジョン」も同じ発想で策定され、グローバル大企業が東京に集中し「稼げ」ば都民も日本も潤うという典型的な「トリクルダウン*2」の計画です。

*1 2015年1月1日、日本経団連がビジョンとして「『豊かで活力ある日本』の再生」を発表
*2 トリクルダウン 「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」という経済理論。2014年12月22日、OECDはトリクルダウンは起こらなかったし、先進国の経済成長を損なっていると発表

多国籍企業のためのメガインフラ整備・「大都市改造計画」を協力に推進

 現在東京では、小泉内閣・石原都政にはじまる「都市再生」事業に加えて、20年オリンピックをテコにした開発や臨海部開発など、スーパーゼネコンや大手不動産、メガバンクや国際的なファンドなどによる都市開発プロジェクトが目白押しに進められています。
 今回の「長期ビジョン」では、舛添都政が提唱する「グローバル・イノベーション特区」・「東京国際金融センター構想」、オリンピック成功を口実に、三環状道路などの道路ネットワーク建設、空港・東京港機能の強化、複数の新線やリニア新幹線を視野に入れた陸・海・空の広域インフラの整備、などが新たに加わりました。さらに、「木密10ヵ年プロジェクト」では防災を名目にして、住民の反対で事実上廃止となっていた都市計画道路=特定整備路線建設を20年までに強引に押し進めようとしています。
 これらは「都心等における都市機能の高密度な集積の推進」として「長期ビジョン」にすべて組み込まれ、都心周辺と臨海部で19のビッグプロジェクト計画が示され、「東京一極集中」が加速します。
 防災の計画も出されていますが、人的被害と火災延焼を防ぐ上で効果のある木造住宅の耐震補強や燃えない住宅造りなどは自助=自己責任とされるなど、道路と都市改造中心のものといわざるを得ません。環境・エネルギー分野も舛添知事の「東京大改造」と矛盾しない範囲の施策にとどめられています。

東京の貧困と格差、医療や介護など都民の困難と正面から向き合わず

 「長期ビジョン」は10年後の将来像として子どもたちが健やかに成長できる社会、質の高い医療で健康に暮らせる環境、高齢者に医療・介護・生活支援ができる地域包括システムの構築、障害者が地域で安心して生活できる環境、若者が経済活性化の原動力になり、女性が働きやすい職場環境の整備で幅広く能力を発揮している、日本人の誇りを持って、世界を舞台に活躍する人材が育成されているとしています。
 しかし、「長期ビジョン」は、東京に集中的に現れている若者や女性、高齢者、とりわけ子どもの貧困や生活保護の深刻な実態、いのちに関わる国民健康保険、後期高齢者医療費、介護保険料の度重なる値上げ、ブラック企業や労働者・アルバイトの「使い捨て」、連続する賃金の低下や年金の削減、東京の産業を支えている中小企業や小規模事業所の廃業や困難、学力競争と貧困の連鎖が子どもの健全な発達をゆがめている教育の現実を真正面から向き合っていません。
 実際に、「長期ビジョン」の3ヵ年の実施計画(事業費3兆7400億円)を見ると、インフラ整備・グローバル都市実現が52%、オリンピック関連も加えると60%を占めている一方、都民が切実に求めている福祉=「福祉先進都市の実現」は、事業費全体のわずか7・8%にすぎません。《グラフ参照》
 生活に苦しむ圧倒的多数の都民の実態を正確に把握し、その原因を明らかにして、解決のプロセスとビジョンを示すことが東京都としての本来の役割ではないでしょうか。
 「長期ビジョン」の多くは、安倍内閣の社会保障制度・労働法制の改悪、子ども・子育て関連法の改悪と同一の視点や政策から組み立てられており、このまま展開されれば、「10年後の姿」とは真逆の都民の福祉やくらし・教育は後退し、破壊されてしまうでしょう。

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都民の強い要求と運動で、保育の待機児童解消や特養ホームの増設、非正規の雇用化など計画に

 保育の待機児童解消のために17年までに4万人増、19年度までに学童クラブ1万2千人増、25年度までに特別養護老人ホームの整備6万人増・認知症グループホームの整備2万人増・介護老人施設の整備3万人増の目標を掲げ、整備費の負担軽減や都営住宅の用地や国有地・都有地等の活用、借地などへの支援も打ち出しています。
 しかし、保育の待機児解消は、認可保育園を求める待機児童全体の解消には足りません。また、3人に1人が非正規は異常と、非正規労働者の正規雇用化を17年度までに1万5千人とし、不本意非正規*3を半減したいとしています。
 しかしこの非正規の正規雇用化も、非正規労働者全体でなく、不本意非正規の中で求職活動をしている労働者、非正規の7・7%に限定した計画となっています。厚生労働省も同様な立場です。
 都民の切実な要求の全面的な実現につなげるためには、都民の粘り強い運動が展開されなければなりません。

*3 不本意非正規 就業構造基本調査において、非正規労働者の中で他の仕事に変わりたい転職希望者や追加就業希望者と回答したもののうち、「正規職員・従業員」を希望した者。都内の非正規労働者216万人(35・7%)、そのうち不本意非正規は27・5万人(12・8%)、そのうち求職活動者16・7万人(非正規労働者の7・7%)《長期ビジョン》。

憲法を生かし、平和をつくりあげる戦略・政策なしの「ビジョン」

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横田基地へ飛来するオスプレイ
 「長期ビジョン」は新たな戦略に基づく都市外交を政策指針の一つに掲げていますが、オリンピックの成功と東京のグローバル化に向けた取組が中心で、東京と日本の平和をつくりあげる課題は戦略にも政策指針にも掲げられていません。
 世界で唯一首都に置かれている米軍横田基地については軍民共用化が掲げられ横田基地を中心に展開される低空飛行やパラシュート降下訓練、CV22オスプレイ配備計画が計画されているもとで、都政の重要課題であるにもかかわらず、「長期ビジョン」では全く取り上げられていません。さらに問題なのは、「中間報告」にあった東京の民間航空の運航に重大な支障をきたしている米軍の「横田空域の全面返還」が削られてしまいました。





子どもの願いに背く「長期ビジョン」
児玉洋介(東京都総合教育センター所長)

 長期ビジョンに見られる教育施策は、“企業が世界一活動しやすい都市東京”という政治戦略目標に子どもたちを従属させ、「グローバル人材」の育成に最大の価値をおき、学力競争、スポーツ競争、キャリア競争へとますます子どもたちを追い込むものです。行政の教育に対する最大の責任はゆき届いた教育のための諸条件の整備ですが、ビジョンはこの責任を放棄しています。国が35人学級からの後退を示す中、東京での「少人数学級」の実施計画は欠かせないビジョンであり、高い教育費負担と教育格差の是正のための助成制度、無利子や給付型の奨学金制度などの都民の願いに応える施策、石原都政のもとで歪んだ歴史観や日の丸・君が代のおしつけの是正こそが求められているのではないでしょうか。

憲法を生かし、都民のくらし、福祉、人権、平和を第一にする東京へ

 東京は今、だれも経験したことのない歴史的な変動期にあります。だからこそ、東京の人口動態、地域経済の動向、階層別・分野別の雇用や生活、文化の実態など都民全般の実態を調査し、都民参加で課題と将来像をつくりあげることが求められています。
 石原都政以来つづいてきた大都市改造の根本的な検証を行い、新たな都民本位の東京づくりビジョンが求められています。

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