〈連載〉2020年東京オリンピックを考える(5)
2014年6月15日
偽装されたコンパクト
東京都は2回にわたる招致計画を策定するにあたって、「コンパクト」をコンセプトとし、主要競技施設を選手村から8キロメートル圏内におさめる配置計画を立案、これを招致活動の目玉としました。
この結果、地震災害や液状化・津波の危険のある臨海部に選手村と主要競技場が集中することとなりましたが、東京都が「コンパクト」というコンセプト(ロンドン大会でつかわれた意味合いとはずいぶんかけ離れていますが)にこだわったことについては背景があります。
それは、2008年の大阪市の夏季オリンピック招致活動の際に、IOCの事前調査にあたって環状高速道路が渋滞し、IOCの調査メンバーが歓迎パーティに間に合わず不評を買い、大阪市が招致レースに敗北したとされていることです。(少なくとも東京都はそう考えていました)
そのため、東京都は大会開催中の選手及び関係者の移動(時間)を、招致成功のおおきなファクターとして考え、招致計画の策定にあたって、選手村と競技会場との移動時間を最小限にすることを第一条件として、「コンパクト」な配置計画を立案することになったのです。
しかし、「コンパクト」という意味は理解できるとしても、なぜ、主要施設の配置を選手村から8キロメートル圏内という空間におさめなければならないのか。「謎」という人もいます。
絶妙な8キロメートルのライン
これを8キロメートルに拡張した意味は、選手村から約8キロメートルに位置している国立競技場をメインスタジアムとする必要があったこと。逆に言えば、8キロメートルに拡げなければ国立競技場を建て直してメインスタジアムとして活用することができなくなるからに他なりません。
8キロメートルという距離は選手村とメインスタジアムの距離として意味があるのであって、コンパクトの基準が8キロメートルにあるわけではないのです。
一方、既存の施設の活用を求めているアジェンダ21を遵守する立場にたてば、1964年のオリンピックのレガシーである駒沢の施設は、2020オリンピックの主要会場として、選ばれてしかるべき競技施設であり、その最有力候補です。
ところが、東京都には駒沢の施設を採用すると、臨海副都心の施設は不要となり、臨海副都心の救済に不都合が生じるという事情がありました。(第3回参照)
その駒沢オリンピック公園は選手村から10キロメートル余のところにあります。8キロメートルというラインは、国立競技場を圏内にいれ、その一方で、駒沢オリンピック公園は圏外とするこという、絶妙なラインということができるのではないでしょうか。
2020年オリンピック・パラリンピックを、真に平和とスポーツの発展に貢献する祭典とするとともに、巨大化の弊害から脱却し、簡素で、環境に優しく、持続可能な社会づくりに貢献する、あらたなオリンピックの一歩とすることが求められています。