〈連載〉2020年東京オリンピックを考える(2)
2014年2月15日

異議続出の開催計画

 既存の競技施設をできる限り最大限活用し、これを良好な状態に保ち、安全性を高めながらこれを確立し、環境への影響を弱める努力をしなければならない。
 既存施設を修理しても使用できない場合に限り、新しくスポーツ施設を建造することができる。(オリンピックムーブメント・アジェンダ21)

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建設時の現国立競技場。新国立競技場の高さは、現施設の照明灯より10mも高い
 これは、国際オリンピック委員会(IOC)が、国連環境開発会議で採択された「アジェンダ21」にもとづいて1999年に策定したもので、オリンピック憲章とならんで、オリンピックに参加する地域・国が遵守することを求められている規範です。
 ところが東京都は開催計画の策定にあたって、規範を無視し、1964年の大会の第二会場となった駒沢競技場などの既存の施設の活用をおこなわず、新国立競技場の建設や臨海副都心での新規施設の建設をつよく打ちだしました。
 なかでも重大なのが、メインスタジアムになる新国立競技場(新宿区)の計画です。
 計画では、前大会のメインスタジアムになった現競技場をつぶして、あらたに8万人を収容する巨大スタジアムを建設するというもの。
 国際コンペで選定された案は、北側のスロープがJR中央線をまたぎ、高さも70mという巨大なもので、3000億円(当初計画)もの資金をつぎ込む計画でした。

風致地区無視 ―― 都が誘導

 新規施設の建築および建築地所について(略)、地域にある制限条項に従わなければならず、また、まわりの自然や景観を損なうことなく設計されなければならない。(アジェンダ21)

 建設予定地は、東京都の風致地区に指定されており、本来、このような高さの建物を建てることを認められていません。にもかかわらず、東京都は設計コンペにあたって、この風致地区の規制を無視してよいと指示していたのです。
 東京都の行為は、明らかに五輪憲章とアジェンダ21を冒涜するものです。
 くわえて東京都は、昨年六月、開催地が決定されるより3ヶ月も前に開催した都市計画審議会で、「神宮外苑地区地区計画」を策定。新国立競技場の位置するA2地区については高さ制限を75mまで緩和してしまったのです。
 この無謀な計画に対して、世界的な建築家である槇文彦氏が、“異議”を申し立てるとともに、幅広い建築家、スポーツ関係者、都民が疑問を投げかけ、開催計画の見直しを求めるにいたっているのです。
 都知事選挙直後の、2月18日には、「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」が、公開勉強会を開催。2016年東京オリンピック招致に係わった東京都の元幹部職員が、この建設計画に異議を表明したほか、サッカー・ジャーナリストが、世界のメインスタジアムが五輪後、お荷物になっていることを紹介。最近は利用後、ダウンサイジングしていること。陸上競技とサッカーの併用は考えられないことなどを報告。建築家も、現競技場を改修利用し、仮設のスタンドをつくり、全国の津波避難ビルとしてあと利用するプランを発表しました。
 新日本スポーツ連盟や東京地評、自由法曹団などで結成された「2020東京オリンピック・パラリンピックを考える都民の会」も、都民の目線からの検証をすすめています。


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