《新連載》2020年東京オリンピックを考える(1)
2014年1月15日

民意なき立候補

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異議の声があがっている新国立競技場モデル図(承知委員会立候補ファイルから)
 昨年九月七日。2020年オリンピックの開催都市として、東京都が選ばれました。安倍政権はさっそく、オリンピックをアベノミクスの“第4の矢”に位置づけ、東京都も、「オリンピック・パラリンピックの開催を推進力として東京の発展を加速させる」「激化する都市間競争を勝ち抜き、東京を世界一の都市にしていく」ことを掲げ、オリンピックを梃子に、三環状道路の整備や羽田空港の国際化などの都市インフラ整備=大型開発を推進することをあからさまに表明しています。
 本稿は、生活者である都民の視点にたって2020年東京オリンピックを考えてみたいと思います。

トップダウンで立候補

 第一に、東京でのオリンピック開催が都民が求めたものなのか、民意にもとづくものなのか、どうかという問題です。
 経過を追ってみますと、はじめに、文部科学省が全国の政令市と東京都を訪問し、夏季オリンピック大会への立候補を要請(2005年)したことからはじまります。その背景には、“三〇個の金メダルを確保が至上命題”であり、その実現には“ホーム=日本でオリンピックをおこなう必要がある”という同省の考えがあったとされています。
 要請を受けた政令市は、福岡市を除きいづれも立候補を辞退しましたが、東京都の場合は、森喜朗元首相・日本体育協会会長(当時)が石原都知事をひそかに訪問。立候補を要請する動きがあり、これをうけた石原知事が、その直後の記者会見(八月五日)で、突如、立候補を表明、つづいて、9月20日の都議会定例会の所信表明で東京として正式に立候補することを表明したことがはじまりです。
 その間、都民の意見を聞くこともなく、まさに、トップダウンで都政を左右する重大な決定を行ったことになります。
 東京都と対照的な対応をしたのが札幌市です。同市では、開催にかかる経費を試算(注1)、市の広報で発表したうえで、1万人の市民アンケートを実施。結果、反対の意見が賛成を上まわったことをうけて、市長が「招致見送り」の判断をするという、市民自治に則った姿勢をつらぬいたのです。
 一方、民意にもとづかない招致決定に対して、当然のことながら都民の反応は冷たく、各種の世論調査でも支持は低迷をつづけることになったのです。
 これに慌てた東京都は、マスコミをとりこんでの異常な招致キャンペーンを展開しました。テレビ広告をはじめ、都営地下鉄やバスの車内広告とラッピング、年末売り出しキャンペーンフラッグをはずさせることまでして実施した商店街の街路灯のフラッグ、1枚100万円の都庁の壁の巨大広告、スポーツ大会での3000万円の広告、数時間で200万円の出演料をはじめ総額2億円を超える各種イベントへのアスリートの派遣など、税金を湯水のようにつぎ込むことで展開されたのです。
 昨年に入ってIOCの世論調査で高い支持が報告されましたが、その背景には、前回におとらないキャンペーンとともに、3・11東日本大震災による“災害パラダイス”現象(注2)が、世論に影響をあたえたことが指摘されています。

異議ありの声続出

 いま、開発優先の開催計画に対して、専門家や都民から“異議あり”の声があげられ、マスコミも問題を指摘する記事を掲載せざるを得なくなっています。このまま、大型開発優先、都民おきざりのオリンピック開催準備がすすめられるならば、都民の支持を急速に失うことになることはあきらかです。


注1・総経費1兆8328億円。うち2550億円市負担。
注2・災害パラダイス=巨大な災害が発生した際に、通常は見られない人間間の連帯・共同が生まれる現象。災害ユートピアとも。


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