関東大震災から90年 東京は安全な都市に成長したのか(3)
2013年10月15日

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住民の消火活動で延燃をまぬがれた神田和泉町・佐久間町
 90年前の関東大震災をきっかけに生まれたまち・墨田区京島。
 同地域は、大震災で焼けだされた本所周辺の住民が移住してきたもので、復興の住宅は、越後=新潟県から出てきた大工集団が、あたり一帯の土地を地主から借り受け、長屋形式の住宅を大量に建設し、長屋経営をおこなったことからはじまります。
 このため、底地を所有する地主・地権者→その地権者から土地を借りて住宅を貸す借地人→土地も住宅も自分では所有せず家賃を払って居住する借家人という、独特の権利関係が形成されることになりました。
 同地域は、その後、第二次世界大戦の戦火をも逃れて、当時のまちなみと住宅を残して、都内でも有数の木造住宅密集地域として今日にいたっています。
 この間、墨田区が共同住宅の建設や消防車の入れる街路の整備など修復型まちづくりにとりくんでいますが、事業をすすめるうえで最大の障害となっているのがこの複雑に入りくんだ権利関係にほかなりません。

ハード偏重の木密対策

 現在、東京都は、「不燃領域率」=空き地や耐火建築物の面積割合が60%未満の1万6千ヘクタールを木造住宅密集地域と指定し、なかでも、特に建物の倒壊や火災危険度が高い「整備地域」として計28地域7千ヘクタール、「重点整備地域」として計11地域2400ヘクタールを指定。そのうち17区四六地区(約2050ヘクタール)を木造住宅密集地域整備事業の対象地域として事業をすすめていますが、京島地域をはじめ遅々としてすすんでいないのが現状です。
 同時に、東京都は3・11東日本大震災をうけて、「木密地域不燃化10年プロジェクト」をうちあげ、各区に督促して、道路の「特定整備路線」と「不燃化特区」の整備を最重点課題として推進しています。
 この特定整備路線に指定された道路の大半は、住民の反対などによって、事実上、計画廃止状態に置かれていたものです。現道のない住宅密集地や学校や公共施設、寺院などを突きぬける計画など住環境破壊の道路計画にほかなりません。
 また、計画のなかったある区では、東京都から、9月7日のオリンピック開催地決定前の8月中に申請を出して欲しいと強烈なアタックを受けたといいます。
 そして各地域では、このような東京都強硬姿勢を反映して、反対する住民に「強制収容」の言葉をちらつかせ、このままでは、関東大震災のような大火災は避けられないなどと、恫喝をくわえているのが現状です。
 しかし、このプロジェクトの前提とされている昨年4月に発表された「首都直下等地震被害想定」の火災延焼のシュミレーションは、住民や地域住民組織、消防団、消防署などによる初期消火は、まったく行われない設定であり、いったん火災が発生したら、延焼を遮断できる幹線道路まで火災は止まらず、焼きつくされるというシナリオをもとに策定されたものです。
 しかし、この想定は、関東大震災で、町会や子どもたちも参加したバケツリレーなどによって延焼を免れた経験(神田和泉町・佐久間町)からみて不合理なものといわざるを得ません。
 また、「東京都火災予防審議会(東京消防庁)」が策定した答申「減災目標を達成するため木造住宅密集地域において緊急に実施すべき震災対策」(2011年3月31日)では、(1)火元消火力~(2)隣保初期消火~(3)地域住民による延焼阻止~(4)延焼阻止活動(消防隊・消防団)などの、発災時の各段階での対応可能性とそのために消化器や軽可搬消防ポンプ、水利などの整備について、緊急に整備することを提案しています。
 東京都はこのようなソフトによる消火・延焼防止の実効性を無視して、ひたすら、上からの押しつけ公共事業としてのプロジェクトを強行しているのです。
 火災予防審議会答申については次号。


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