新春座談会 都知事選候補 宇都宮けんじさんとおおいに語る
2013年1月15日
 いのち・くらし・平和を守る新しい東京へ

感動的だった投票日前日の訴え

──まずは宇都宮さん、大変お疲れさまでした。選挙戦最終盤の新宿駅西口での演説は気迫あふれるお話で、聞いていて本当に胸が熱くなりました。100万票近い得票数は、「革新都政をつくる会」が支援した候補者としては、この間最高の数字です。宇都宮さんのひたむきな人柄と、政策として掲げた「4つの柱」が有権者の心を動かしたのだと思います。

他候補を圧倒した活動

宇都宮 結果はとても残念でしたが、私個人としては非常に充実した選挙戦ができました。選挙対策本部には本当にいろいろな人が参加してくれて、勝手連も各地に結成されました。他候補を圧倒するたたかいができたと実感しています。その集大成が投票日前日の新宿駅西口での街頭演説でした。参加者の熱気を感じて、私もつい熱い演説をしてしまいました。

運動の継続が重要

宇都宮 開票が始まって早い段階で猪瀬候補の当選確実が出て、悔し涙を流す人もいましたが、むしろこれから運動をどう広げていくかが重要だという話になり、負けたのに最後は祝勝会のような雰囲気になりました(笑)。
 96万票余りを投じてくれた都民は、私たちの政策に賛同してくれた方々。それを重く受け止めて、次の運動につなげていかなければなりません。初めての選挙活動でしたが、いい運動ができたし、新しい出会いもたくさんありました。支えてくださったみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。

「原発ゼロ」に広がった共感の輪

 宇都宮さんとともに都知事選をたたかったことは、全国の会員の励みになりました。「4つの柱」の一つである「東京から脱原発をすすめます」に共感した都民や国民は大勢います。福島第一原発事故は東京にも放射能被害をもたらし、若いパパ・ママにとりわけ大きな衝撃を与えました。
 各地域で放射能を測定する活動が展開され、食品の安全確保についても取り組みが進んでいます。選挙中に「原発ゼロは宇都宮 OK OKけんじにまかせろ!」などの“宇都宮コール”もできて、共感の輪が広がりました。
宇都宮 脱原発・反原発を訴える方々や原発の是非を問う都民投票に取り組んだ広範な方々が支援団体になってくれました。また、脱原発を掲げる政党に応援してもらったことも大きな力になりました。

福島を忘れない

宇都宮 国政では原発推進の自民党が選ばれた中で、今後は脱原発運動の進め方についても考えていかなくてはなりません。その時に忘れてはならないのが、福島の人たちのことです。ふるさとや職場を奪われ、家族がバラバラになった福島の方々の、脱原発への思いはとても強いはずです。選挙戦の中では浪江町の馬場有町長が応援に駆けつけてくれて、「福島からは『ぜひ宇都宮都知事を』の声があがっている」と訴えてくれました。
 放射能の問題については、都内にもホットスポットがあることなどから、子どもの健康や食品の安全に関心を持つ方々が熱い思いで支持してくれました。とはいえ、原発や放射能の問題に関心がない人との温度差を感じたのも事実です。もう福島の被害が風化してしまったような雰囲気も一方でありますね。

自分の問題として考える

宇都宮 今後の運動の方向として、自分にひきつけて原発ゼロの必要性を理解してもらうことが大切だと思います。そのために、一つには福島の被害実態をリアルに伝えていく。「福島の人々が、いまどんな状況に置かれているか」という受け止めが広がらないと運動も広がらないのではないでしょうか。
 また、放射能は身近に被害を生んでいます。食品の安全について多くの人が自分の問題として受け止めれば、脱原発の候補者を支持するはず。脱原発の運動を冷ややかに見ている人に、こうした問題をどう広げていくかが問われています。

子どもの未来を奪った

工藤 福島の教員たちは手探りの状態です。原発事故によって、子どもたちが「結婚できない」「子どもが産めない」と将来の希望を失っているということを福島の教員から聞きました。この現実に対し、行政も教育者も入り込めていません。子どもの未来を奪ったことを痛切に感じています。
宇都宮 福島の原発で発電した電気を一番多く使っていたのは東京なわけです。そういう責任を一人ひとりの都民が感じること。そうした認識も広げていきたいですね。

石原都政によって破壊された教育現場

工藤 「4つの柱」の一つに「子どもたちのための教育を再建します」と掲げてもらったことも、教育者にとって大きな励みになりました。石原都政で教育現場はメチャクチャにされ、子どもたちは学ぶ喜びを奪われています。教師たちは評価制度によって分断され、教育現場に民主主義がなくなっています。
 全教(全日本教職員組合)が発行している月刊誌『クレスコ』で、宇都宮さんに恩師との思い出を書いていただいたことがあって、その中で恩師の佐藤先生が働くことの大切さをそれとなく伝えてくれたという話がありました。これが本来の教育のあり方だと思います。
 いまは学校選択制による教育競争で差別的教育が横行し、貧困と格差の拡大によって親の経済状況で教育格差が広がるという、ひどいありさまです。

被害者は子どもたち

宇都宮 私が日弁連会長だった時に、「日の丸・君が代」強制に反対した教師の大量処分に対し、それに異議を唱える裁判が各地でたたかわれました。裁判所の判決は処分を明確に憲法違反としなかったため、それを批判する会長声明をいくつも出しました。憲法違反の「日の丸・君が代」強制をやるような教育行政が行われていることは、大きな問題だと感じています。
 教師のみなさんも苦労されていると思いますが、一番の被害者は子どもです。自分の頭で考え、意見の違う人と話し合い、合意に達することが民主主義社会に生きるうえで不可欠の能力です。教員集団が自由を奪われて、子どもに民主的な教育ができるはずがありません。子どもたちは私たちの社会の将来を担う一員。教育は、国の将来を形づくるきわめて重要な問題です。

軍国主義教育を許すな

宇都宮 教育は憲法問題とも重なります。東京の教育を破壊してきた石原前都知事は、憲法を破棄すべきだと言っています。自民党の安倍総裁も憲法改正や国防軍創設を唱えていますが、まさに戦前に戻ってしまうような主張です。戦前の前近代的な教育と憲法改正・軍国主義は裏表の関係。教育だけで終わらない問題だと感じています。
 安倍政権になったら、教育問題が大きな政治的課題になってくると思います。教職員集団のたたかいを市民や国民が支援しながら、「昔に戻るような教育を許さない」と訴えていくことが重要だと思います。

憲法を守るたたかいは参院選が正念場

 4つの柱では「憲法の生きる東京」が掲げられていますが、「9条を守る」と明言した候補者は宇都宮さんだけでした。自民党・安倍総裁の「国防軍」については、反対する女性たちから「国防軍とは何事か!」「憲法を改正するの?」「日本はどこへ行くの?」などの声が上がり、最終盤でものすごい対話になりました。
 金曜日の官邸前デモに参加している若い方の話ですが、デモへの参加を両親は快く思っていなかったのに、国防軍の話が出てきたら「憲法改正反対のデモになら私も行く」と言っているそうです。参院選が行われる今年が運動の第2ラウンドだと思っています。
宇都宮 今年の参院選はきわめて重要です。憲法改正の発議は国会議員の3分の2が賛成すれば可能で、それが具体的な課題になってきています。そうさせないための運動が早急に求められています。

戦争をリアルに伝えよう

宇都宮 選挙中に憲法問題を訴えていて感じたのは、中高年は非常に反応がいいこと。「父親が戦争に行って負傷して帰ってきた」などの生々しい話を聞いているんですね。しかし、若い人たちは戦争から遠ざかっている。なぜ憲法9条を守らなければならないのかを理解してもらうために、戦争体験者の話を伝えていかなければなりません。
 いまの政治状況を見ていると、軍部の独走を止められず日中戦争から太平洋戦争に突入した結果、アジア諸国において2000万人を超える犠牲者を出し、わが国においても広島と長崎に原爆を落とされ、東京大空襲をはじめとする全国各地の都市への空襲などにより300万人を超える国民の尊い命が奪われた愚行が、また繰り返されようとしていると危機感を抱いています。
 戦争の話をリアルに伝えていくことは、教育の問題でもあり、同時に憲法を守る運動の課題でもあると思います。
 「憲法が変えられたら、また戦争に行くことになるのよ」と話していたら、高校生に「徴兵制になったら戦争に行くことになるの?」と質問されました。
 作者自身の被爆体験を描いたマンガ『はだしのゲン』を子どもの頃に読んだという若いお母さんたちは、「子どもが戦争に連れて行かれることになったら、私はゲンのお父さん(反戦思想の持ち主)になって立ち上がる」と話しています。
 いまの母親世代は、小さい時にまだ、そういう教育を受けているのが救いですね。
工藤 私の娘は大学生ですが友だちは、憲法や9条のことを知らないというんです。自分の専門分野のことしか勉強しないんですね。高度な専門教育を受けている人間が憲法を知らないという大変な時代です。
宇都宮 憲法は、法律家である私の原点です。今回の選挙を契機に、護憲を都民的・国民的運動にしていかなければなりませんね。

平和と貧困の関係

──憲法というと、生存権を保障した25条も大切です。宇都宮さんは反貧困の運動にも熱心に取り組んでおられます。
宇都宮 9条と25条は「車の両輪」だと思います。堤未果さんの『貧困大国アメリカ』では、貧しい青年が生活に困り、パンのために戦争に行く姿が描かれています。アメリカには日本の憲法25条がないわけです。
 日本でも、フリーターをずっと続けていた青年が「希望は、戦争。」と書いて話題になったことがありました。どうがんばっても正社員になれないのだから、むしろ戦争でも起こって世の中がガラガラポンとひっくり返れば、自分たちが浮かび上がることができると。こういう考えは非常に危険です。平和な社会をつくるうえでも、貧困や格差の是正はきわめて重要になっています。
 街頭のシール投票で、いくつか政策を示して投票してもらったところ、原発と憲法に圧倒的にシールが貼られました。いまの右傾化の流れは怖いと市民も感じています。

つながりを広げていこう

工藤 都知事選を終えて、「4つの柱」で掲げた課題は本当に重要だったと再確認しています。これからの都政や日本を考えるうえでの指針にしていかなければなりませんね。ぜひ宇都宮さんには、これからも「4つの柱」のスタンスでがんばっていただきたいと思います。
宇都宮 日弁連会長の時も、反貧困の運動をより充実させるために出馬しました。活動の延長線に会長立候補があったわけです。今回も、「『4つの柱』を実現する運動をより進めるには、行政の長になった方がいい」と要請された時に、その言葉がストンと胸に落ちたんです。「4つの柱」にもとづく運動を引き続き強めたいと考えています。
 選挙をたたかった一人として、私もみんなと一緒に運動を担っていく決意です。一弁護士、一市民として運動を続けながら、つながりを広げていきたいと思っています。
──くらし・福祉を守るたたかいは待ったなしです。私たちも一緒に、石原都政を継承する猪瀬都政の悪政を許さず、いのち・くらしを大切にする都政の実現をめざしてがんばりたいと思います。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。


2012年度都知事選挙の結果について(談話)
革新都政をつくる会事務局長 中山 伸

 石原前知事が行き詰まり都政を投げ捨てて実施された2012年都知事選挙(12月16日投票)は、史上はじめて衆院選挙との同時選挙となり、かつて経験したことのない選挙戦となりました。
 衆院選挙実施で、この国の進路をめぐる論戦が激しく行われる中、都知事選挙は、13年半の石原都政の継承か転換かが厳しく問われる選挙となりました。
 革新都政をつくる会は、広範な市民が共同して擁立する宇都宮けんじ候補を支持し、「人にやさしい東京をつくる会」と連携して、宣伝、対話に総力をあげてたたかいました。
 選挙戦は、石原知事の突然の辞任、都知事選告示目前の解散・総選挙の実施決定により衆院選一色となる状況の下、テレビ討論がほとんど行われず、前副知事猪瀬候補も積極的な論戦を事実上回避したことを含め、石原都政の悪政がほとんど知られないままの選挙戦となりました。その結果、猪瀬候補に400万票を大きく超える得票を許すことになりました。
 同時に、このなかで宇都宮けんじ候補は、石原都政を転換し、「人にやさしい東京をめざす4つの柱」の実現をめざし、「脱原発、被災地支援、いのちを守る都政を!人権、平和を守る都政を!とりもどそう都民の都政を!憲法を守る都政を!」と訴えました。そして広範な市民、政党と共同してたたかい、誠実な人柄と反貧困をたたかう弁護士としての信頼が共感をひろげ、革新都政をつくる会が支援する候補者としては、この間最高の968,960票(15.04%)を獲得しました。
 総選挙の風がふきあれるなかで、宇都宮けんじ候補に寄せられた得票は、新しい都政への願いと、切実な要求のこもった得票であり、新しい都政をつくる展望を切り開く力となるものです。
 宇都宮けんじさんは、「支援の輪が広がり、つながりができたことは大きな成果。掲げた公約に引き続きとりくみ、支援してくれた人たちにこたえたい」と表明しています。
 革新都政をつくる会は、宇都宮けんじ候補とともに奮闘したすべての市民・団体のみなさんに心より敬意を表するとともに、石原都政継承の猪瀬都政の悪政を許さず、都民の切実なくらし、福祉、教育、地域経済などの要求実現めざして、共同をさらにひろげ、都政転換めざし、新たなたたかいのスタートをきることを表明するものです。


2013年 青年の出番
都知事選・総選挙をたたかう中で見えてきたこと
民青同盟東京都委員会 岩崎 明日香

 「政権交代」と東日本大震災・原発事故を体験し、社会のあり方と生き方を模索している若い世代にとって、今回の都知事選・総選挙は、自分たちが主権者として真剣に政治のゆくえを見極めようとするものでした。「自分も行動したい」「身近な人に広げなければ」という流れなど、新たな希望の芽が無数に生まれたと感じています。
 のべ1千人以上ととりくんだ被災地支援活動や、再稼働反対・原発ゼロをめざす行動などから、その種まきは始まっていました。「自己責任論」と競争でバラバラにされ、連帯と行動をおさえつけられてきた若い世代どうしが「一緒に社会を変える仲間なんだ」と確信を深めてきたことが、職場や学内で対話・宣伝に踏み出す大きな力になりました。
 職場では「なぜ消費税を上げたいのか」「保育の現場を壊してきた石原都政の路線が続くと私たちにとって大問題」「貧困をなくそうと頑張ってきた宇都宮さんを応援して」と同僚に対話を広げました。
 また、街頭・学内では、「政党見極めシールクイズ」を駆使して、「最低賃金制度を廃止しようと口にした政党がある」「核兵器を持とうとしている候補者がいる」「原発なくても夏の電力は足りていた」など話が弾みました。宣伝のたびに後援会員が増えていきました。「部活でたくさん配ります」とビラを持ち帰ってくれる学生もいました。
 金曜恒例の官邸前抗議行動では、「自民党が圧勝しそうだから抗議の意味で投票には行かない」という青年とも複数出会いました。「原発をなくすために本気で頑張る政治勢力をのばすことが原発推進勢力に痛打を与えるので、ぜひ投票に行ってほしい」と訴え納得してもらう場面もありました。私たちから声を掛けることの大事さを痛感しました。
 選挙期間中のとりくみを振り返り、これまで悪戦苦闘してきたことが実りはじめきたことを実感しています。同時に、本当に政治を変える力をもてるよう、都内のすみずみに根をはり、元気な姿と活動を広げることに邁進したいと強く思わされました。
 「青年と私たちの目指すベクトルは同じ。これからが新たなスタート」という仲間の力強い意気込みに励まされ、2013年、大きく運動を広げたいと思います。




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